ブログ

「風笛」をもう一度

個人的な内容を本日は書かせていただきたい。

今から21年前にNHKで「あすか」というドラマが放送された。

当時の私は専業主婦。三番目の子どもが生まれて6か月くらいで夫が大学病院に出勤すればあとは今のように何かに追われることもなかった。

「朝ドラ」の主題歌はそれまでほとんどが誰かの「歌声」があったと思う。しかし「あすか」の主題歌はオーボエという楽器が奏でるメロディーだけ。哀愁が漂う、しかし爽やかな魅力的な独特の音。穏やかな、厳かな音色、その旋律はのどかな広い自然を感じさせ、遠い記憶を運んでくるようで私はすぐに惹きこまれた

当時、幼い子どもがいる為、チャンネルは一日中教育テレビになっていたが、「あすか」が始まってからはこの曲を聴きたくて朝8時、私はNHKにリモコンを合わせた。ドラマが放映された半年間、毎朝、同じ時間に、同じように感動してドラマが始まる前に大げさでもなく泣いた。その主人公「あすか」は竹内結子さんだった。

9月の終わり、突然の訃報に驚いた。

あんなに美しい人に、美しい姿に、いったいどんな鬱があったというのだろう。産後うつ、とかコロナが引き金とか勝手に推測しても本当のことは本人にしかわからない。ただ、こんな出来事がある度に思うのは、大切な人がもし、何も伝えず自分で命を絶ったなら、自分が生きている間、ずっとずっと「どうして?」と答えを知りたくてたまらないだろうと思う。

あの曲で毎朝泣いたのには実はもう一つ理由がある。母が癌で亡くなって一年、

ようやく落ち着いた気持ちが、あの曲が流れた瞬間全てを思い出すような感覚だった。3人の子どもを抱え専業主婦としてある意味閉鎖的に過ごす私に、あの曲が流れる数分が癒えることのない悲しみと向き合う時間だったのだ。

「癒される」とは忘れることでもなく、心を優しく撫でることでもなく、傷ついた部分をえぐり取りそのえぐられた部分が自ら再生していくことだと誰かが言った。

「風笛」が流れた半年間、私はまさにそんな体験をしたような気がしている。オーボエの美しさと繊細さ、柔らかさ、優しく棘がない音色はまさに竹内結子さんのようだと改めて思える。彼女が南阿蘇の災害支援を4年間続けていたことを訃報と共に初めて知った。

美しい魂は決して忘れられないと思う。